鍛冶橋おじさんとの出会い

先日、銀座へ向かうべく
東京駅から電車を降りて
銀座方面に向かって歩いていました。

東京駅と銀座は、微妙に遠いかもしれませんが、
歩けなくはない距離なので歩いちゃいます。

さて、もうすぐ銀座一丁目駅の入口が
見えてくる、というところまで歩いていったのですが…

ここで、ある衝撃的な体験をしました。

歩いている私の前に
おじさんが正面から歩いてきて
「あれ鍛冶橋だよね?」
と僕に声をかけてきたんです。

突然です。

僕は混乱しました。

2重の意味で混乱したんです。

・鍛冶橋ってなんだろう?
っていうのと、
・突然聞いてくるって…このおじさん何者?

の2点です。


・鍛冶橋ってなんだろう?

僕は、鍛冶橋というのがわかりませんでした。
橋?この変に橋なんてないしなぁ。。。
(後ほどググったら、おそらく
「鍛冶橋通り」「鍛冶橋交差点」のことだったみたいです)

・突然聞いてくるって…このおじさん何者?

普通なら「すみません、ちょっとお伺いしたいんですが」
のような「前置き」が入るはずです。
英語にしたってExcuse meみたいなのは入ります。
見た目的には、特になんの変哲も無い日本人のおじさんです。

特段ファッションがイケてるとか、
イケメンだとか、そういうのはありません。
ごく普通の40〜50代くらいのおっさんです。
電車の中なら新聞広げてるのがお似合いな感じです。

ここで面白いことに気がつきました。

ふつう、
見知らぬおじさんが
「すみません」を挟まずに突然聞いてきたら、
ちょっとムッとするというか、身構えちゃいますよね。
うわ、なんだろうこのおじさん!
って思っちゃうわけです。
ここをお読みの誰もが、そうなるでしょう。

しかし。
しかしですよ。

僕はあまりムッとはしませんでした。

それは別に僕が常に心中穏やかだとか、
そういうのには慣れているんだとか、
そういうことを言いたいのではなく、

このおじさんは上手い手法を使っていたんです。

それによって僕はムッとせずに、
「返答せざるを得ない状況に追い込まれた」んです。

それは何か?
「鍛冶橋」という言葉です。
「鍛冶橋」という言葉は、僕は知りませんでしたから、
その言葉を聞いた瞬間、脳が混乱していました。

だから、「鍛冶橋」という言葉を聞いて脳が混乱している間、
「すみませんと言わずに話しかけてきた無礼さ」という側面は
跡形もなくフッと「消えて」しまったんです。

その結果、混乱が収まった後、(2〜3秒の間でしたか)僕はこう答えました。
「ちょっと…わかりません。」

このおじさんは、相手をムッとさせずに
僕から「わかりません」という返答を見事に引き出しました。

(その手法が見事だったので、
「鍛冶橋おじさん」と(勝手に)命名します。笑)



鍛冶橋おじさんは、
「相手に二つ混乱を同時に与えることによって
 相手の思考をストップさせる」という手法を使いました。

・「すみません」を言わない
・「鍛冶橋」という普通の人が知らないであろう固有名詞をぶん投げる

ということで、僕を混乱させた。
その結果、僕から2番目の返答を引き出すことに成功したんです。
(1番目のは、あくまで「態度」ですから、
無視できるといえば無視できるんですよね。)

ムッとさせずに相手から答えを引き出しているんですから、
ある意味、たくみなコミュニケーション術と言えますし。


「すみません」を入れずに見知らぬ人に話しかけることって、
なかなかやらないことだと思います。
だから、これをやれる人に対して、「すごい勇気がある人なんだなあ」
と単純に思ってしまいますよね。

でも実は鍛冶橋おじさんのように、今回僕に使ったように
「混乱」というロジックを使って相手に不快を与えず
回答を引き出す…といった
素敵な方法を使っている(のかもしれない)んです。



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